倉吉の町並みを見続ける老舗の味。
それは世代を超えて愛されるやさしい一杯だった。「レストラン 三日月」
雲の隙間からのぞく日差しはまだまだ夏の余韻を残している。食欲も戻らない日々が続くがこんな時こそ野菜がたっぷり取れる昼食が欲しいものだ。そんな時にピッタリなのが野菜豊富な「チャンポン」だ。
よし!今日はチャンポンを食べよう!
昭和が残る倉吉のマチナカにある、
入口のショーケースが懐かしいレストラン
訪れたのは倉吉市、創業昭和31年の老舗『レストラン三日月』だ。こちらはハンバーグや牛骨ラーメンでも有名だが、昭和40年代後半から提供している「チャンポン」にも根強いファンが多い。もちろん“たっぷり野菜にトロ~リあんかけ”スタイルの鳥取流。
今回、特別に許可をもらって、調理シーンを撮影させていただいた。
強火で一気に、そしてやさしく。
夏野菜もはいる、たくさんの野菜。
しっかり温めた鍋に葉もの以外の具を入れ強火で一気に炒めていく。今の時期は夏野菜の「なすび」が入る。しばらくして葉ものを投入し更にかき混ぜていく。そして味を整えていく。その様は、炎も上がり、調理人対具材の“真剣勝負”だ。
ラーメンにも使われる“牛骨スープ”投入。
水を得た魚のように彩り鮮やかな具材が鍋の中で踊る。
十分に火が入ったところで“中部の味”が加えられる。「牛骨スープ」だ。仕上がりの味を決めるこのスープこそが“人気の秘密”だ。そしてスープの入った鍋は炎の上で素早く、そしてじっくり煮込まれていく。
いよいよ仕上げ。
トロトロあんが艶やかなスープ。
いよいよ佳境に。牛骨スープにあんがかけられる。全体に馴染んだらすばやく火を落とす。余熱の中でスープは麺がゆであがるのを待つ。
麺を覆い尽くす艶やかなあんスープ。
三日月流“牛骨チャンポン”の完成。
大鍋の中で自由に泳いでいた麺を皿に盛り、完成したスープがたっぷりかけられていく。なにげない作業だが、よく見ると色彩と見栄えを意識した盛り付けをしている。この些細だが、テーブルに届いた時、客の心を一気に引きつける気配りが“料理人のプライド”なのだろう。
季節の野菜もはいる、野菜たっぷりの一杯。
牛骨スープがやさしい、女性に人気の“倉吉の味”。
テーブルに運ばれてきたチャンポンは、彩り鮮やかな野菜などの具材があんによりツヤツヤと輝き、見た目はゴージャス。しかし、箸を入れるとあんが抵抗して食べられるのを拒んでいる様でやんちゃな一面も持つ。そこもチャンポンの魅力なのだが。
さて、味だが、やはり牛骨スープの魅力が引き立つ。野菜の甘味と競演したとても優しい味で、箸を進める手が止まらない。プリプリで大きめのエビを食べるタイミングを計りつつ、あんを絡めて麺を食べていく幸せなひとときだ。「女性に人気がある(店主)」のもうなずける。
●ちゃんぽん 750円/レストラン 三日月(倉吉市)
●取材メモ
倉吉の町を見続ける老舗の味は、世代を超えた庶民の味。親から子へ、そしてその子が大人になって来店しても変わらない味を提供していく。今では少なくなった光景が、ここにはまだあった。味と共に記憶に残るレストランだ。店の空気もまた「おいしい味」を演出する。
住:倉吉市新町3-2334(市営新町駐車場隣り)
営:11:30~15:00(LO 14:30) 17:30~22:00(LO 21:30)
休:火曜
☎0858-22-3586